• キーワード検索
  • タグ検索

シューマン 「ゲーテのファウスト」からの情景 バレンボイム/ベルリン国立歌劇場(2017年)

このアルバムの3つのポイント


え、まだ工事しているの?

世の中にはいつまでも工事がずっと続いている建築物がある。例えば、スペインのサグラダ・ファミリア。日本でも東京の新宿駅なんかがそうだろう。いったいいつ完成するんだろうと思ってしまう。

ドイツにも国立歌劇場(シュターツオーパー)が2010年から7年間もずっと工事をしていた。総工費は当初の予算2億3千万ユーロから、4億ユーロへと膨れ上がった。ドイツ・オペラの本拠地であるこの歌劇場が完成し、2017年10月3日に行われたこけら落としでは、音楽総監督のダニエル・バレンボイムがタクトを取り、ロベルト・シューマンの「ゲーテのファウスト」からの情景を演奏した。その映像作品がArthaus Musikから輸入盤のDVDとBlu-rayが2020年3月6日にリリースされており、国内仕様盤も3月下旬に発売される予定だ。輸入盤では解説書が英語やドイツ語のみだが、映像の字幕に日本語もあるので、映像を鑑賞するには何も支障がない。

ドイツのメルケル首相もこのこけら落としに来ており、映像でも、冒頭に完成したばかりのまばゆいシュターツオーパーの外観、内観が映され、次に聴衆からの拍手が起こるところでメルケル首相の姿を確認できる。

さて、「ゲーテのファウスト」からの情景は、シューマンが1844年から1853年に10年間を掛けて作曲した大作である。ゲーテの戯曲「ファウスト」は同時代の音楽界にも大きな影響を与え、シューベルトが「糸を紡ぐグレートヒェン」、ベルリオーズが「ファウストの劫罰」、リストが「ファウスト交響曲」、グノーが「ファウスト」など、ファウストからインスピレーションを受けて作曲されたものも多い。シューマンもはじめファウストをオペラ化しようと作曲を始めたが、あまりにも長大なためオペラ化は断念し、場面を抜粋して3部構成とするオラトリオとして完成させた。

しかし、ここはベルリン国立「歌劇場」。今回の上演では、このオラトリオを演出付きでまるでオペラのような作品とし、シューマンが作曲していないファウストの場面もセリフを追加して、そこに俳優(歌は歌わないファウスト、メフィストフェレス、グレートヒェン役)を起用している。そのお陰で、オラトリオでは伝わりきらないストーリーを、俳優のセリフを通じて知ることができる。

ただ、デメリットのほうが大きいと感じた。最大の問題は、音楽の流れが止まってしまうこと。例えば、序曲が終わったところで音楽が止まりセリフだけになるのだが、「歌」ではなく声だけなので、気持ちよく序曲を聴いてきた後で「あれ?何か物足りないぞ」と思う。次に問題なのは、ファウスト、メフィストフェレス、グレートヒェンのそれぞれの役で、歌手と俳優が別々にいるので、登場人物がよく分からなくなる。ファウストは歌手も俳優も上下赤い服を着ているので見分けが付くが、グレートヒェン役は愛くるしい感じの若手のソプラノ歌手エルザ・ドライジヒと、ベテランな感じがする女優メイケ・ドロステとで見た目も衣装もタイプが違って、当初別々の役をやっていると感じたくらいだ。結局、オペラのようにするためにセリフと劇を増やしたので俳優としての見せ場が多い演劇になったが、音楽を楽しみにしてきた聴衆は想定外のような気分になったのではないだろうか。新規の演出はすごいと思うが、素直にオラトリオだけで良かったように思う。

さて、この上演の音楽にフォーカスして語ると、指揮を務めるダニエル・バレンボイムは当時75歳。だいぶシワが刻まれてきたが、冒頭から大きな身振りで、ご健在だ。序曲からシューマンらしい情熱と苦悩の音楽で、密度の濃いシュターツカペレ・ベルリンの演奏。

圧巻なのは、第1部第2景。ディズニーランドのパレードのような乗り物に乗って、グレートヒェン役のエルザ・ドレイジヒが登場するが、消息を絶ったファウストを案じる長い独奏での語り掛けを抜群の歌唱力と表現力で演じている。1つ前の第1景であんなに明るくウキウキ話していたグレートヒェンが、急に悲しげになっているので理解できなくなるのだが、ここはWikipediaなどであらすじを見て合点がいった。そうか、ファウストが消息を絶ったんだなと。

他にも、歌があるところは見事に素晴らしい。いっそ歌のところだけで抜粋して元のオラトリオに戻してしまいたいぐらい。できたばかりのシュターツオーパーも美しく、映像だからでこそ見応えのある上演である。

Schumann_Faust_Barenboim_SKB.jpeg

オススメ度:★★
ファウスト役(バリトン):ローマン・トレーケル
グレートヒェン役(ソプラノ):エルザ・ドライジヒ
メフィストフェレス役:ルネ・パーペ
ファウスト役俳優:アンドレ・ユング
メフィストフェレス役俳優:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
グレートヒェン役俳優:メイケ・ドロステ
演出:ユルゲン・フリム
舞台:マルクス・リュペルツ
指揮:ダニエル・バレンボイム
シュターツカペレ・ベルリン (ベルリン国立歌劇場管弦楽団)
ベルリン国立歌劇場合唱団 (合唱指揮:マルティン・ワイト)
ベルリン国立歌劇場児童合唱団 (合唱指揮:ビンツェンツ・ワイセンブルガー)
2017年10月3日, ベルリン国立歌劇場(ライヴ)

受賞


新譜のため未定。

Sponsored Link
【タワレコ】バレンボイム&ベルリン国立歌劇場による2017年再開公演の映像が登場!シューマン:「ゲーテのファウスト」からの情景

試聴


Elsa Dreisigの公式YouTubeで試聴可能。


関連記事


記事のタグ:

※クリックするとタグ付けられた記事が表示されます

コメントの投稿

印は必須項目です。


管理者にだけ表示を許可する

人気の記事


    Blogger's choice [BC]

    ブログ管理人のオススメ記事を紹介します。

    • オススメ盤
    • 新着録音
    • 公演
    • その他

    リンク

    ブログ村のクラシック部門に登録しています。バナーをクリックすると順位が上がり、より多くの方に見ていただくチャンスが増えます。気が向いたら1クリックお願いします。
    にほんブログ村 クラシックブログへ
    にほんブログ村